冬の日記

沈没者の手記

冬、底すらない深みへ沈んでゆくのを感じていた。肉体でも精神でもなく、ただここに感覚される沈没、抵抗こそが私だと…それだけを祈るように沈んでいった。 一切の認識は、塵に帰った。 砂の城を城と思う心は、慈悲なのだと識った。 私は、かつて自分がどの…

冬の日記

何をしても裏目に出た日の帰り。 駅を出て、幾つもの小さな通りが交叉する往来の角をひとり折れ、我が家へと向かう帰り路、夕暮れの気配に降られるやうにやって来る、暗色の制服に身を包んだ高校生らに混じり、喪服姿の老女たちのそぞろに歩いて来るのを、わ…