止まらない扇風機

 殺風景な部屋で目を覚ます。眠っている間中、扇風機が回っていたらしい。
 足の指で電源スイッチを押す。
 しかしプロペラは止まらない。
 怒りまかせに白いプラグを引き抜くも、それでもジャイロは回り続ける。
 私は調査し、そして事実を知った。

 いち扇風機の回転/停止という、些末で個人的な事象すら、人口統計的な無数のバロメーターや、変動為替相場、気象、国際情勢、所有者の身分情報……果てや、太陽系における諸惑星の配置が十字だの直列だの、呆れるばかりに膨大な指標が絶えず絡み合って出力され、そのなかにあって、回転を止めようとする一個人の意志など、どこにも存在意義が無いのだった。

 私は考えるのをやめて扇風機の風を浴びることにした。
 慣れれば楽に違いない、そう自分に言い聞かせ…。

 不意にプロペラが停止した。

                          ———五年前の夢日記